ニュージーランド(2006/6/3-6/10)

関西国際空港を飛び立って12時間後、オークラシド国際空港に到着しました。季節は冬の初めということで、気温は10度前後。ニュージーランドは日本と同じように南北に長い地形で、北島と南島の2つの島から成り立つ国です。「地球の箱庭」とも称され、美しい大自然の景観がいたる所に点在しています。人口は約410万人、様々な人種が混じり合った多民族国家です。治安の良さは、英語圏でもトップレベルだと言われていますが、昨今では外国人を狙ったスリや置き引きが頻繁に起きています。事実、夕刻オークランドの町を団体で歩いて移動していた時、私達の隣にいた中国の女性が急に座り込んで泣き出しました。驚いて尋ねてみますと「バッグ取られた。」と、走り去る車を指差す事件に遭遇し、慌てて自分のバッグの中身を確かめたりしました。また、この国は世界で一番初めに婦人が参政権を得た国でもあり、女性も小さい頃から、自分の意見をはっきり言うことの大切さを教育されています。現大統領や総督をはじめ、ウェリントン市長、大手の会社社長など、全て女性が名前を連ね活躍されています。
 ニュージーランドは、今から100年も前より子育て支援に取り組み、子育てがしやすい国として注目されています。今回、そのシステム確立までの経過と、保育環境の学びに期待しながら研修に参加しました。

◎Houghton Valley Playcentre (プレイセンター)
 運営の責任を親が共同で担う“親主体”の半日保育機関。週1回から5回まで親は交代で保育に参画します。親への支援と親教育が重視され、親対象の親による保育者養成と親教育が各センターや地域のプレイセンター協会で実施されています。この保育者養成コースを修了すると、公的にも一定の有資格保育者として認定されます。
 小高い坂道を登って、眼下を見下ろす場所に小さなプレイセンターが建ち、到着を待ちかねた子ども達が、玄関で手を振っていました。園内を紹介してくださったり、ダンスを披露してくださったりと大歓迎を受け、快く写真撮影の許可まで頂けました。今回の保育担当保護者は男性が2名、女性が3名でした。親達の職業は様々で、眼科医をしている父親が火曜日休みということで、保育に参画していました。全ての親が参画することが当たり前と感じていることが何より嬉しく思われました。また、テラスには大型ノコギリやカナヅチなどの工具が所狭しと大胆に掛けてあったことに危惧し、「小さい子どもがいるのに、危なくないですか?」と、尋ねると「いつもここにあるから大丈夫。子ども達にこの工具を使って色々な遊び遊具を作ってあげたいのです。」と、笑顔で応える父親。みんなで子育てを楽しもう、父親も母親もそのために、自分の休みを活用して参画するなど、日本では考えられない親としての姿勢が見受けられました。

◎Ministry of Education 教育省(アーリーチャイルドディベロツプメント)
 最先端の幼児教育の研究を行っている機関。ニュージーランドの多文化社会に対応でき、より効率のよい、時代に見合う質の高い幼児教育、および幼児を取り巻く生活環境についての研究促進に努めている機関であります。
-この国の動向について-
①プレイセンターが減少している。②民間セクターの参入が増えている。③長時間預かってくれる所を探す親が増えてきた。(民間は、7:00~19:00)④離婚率が高く、両親揃ってない子が増えてきた。⑤子どもの数が減少。⑥若い親が増えてきた。⑦未満児の預かりが増えてきた。など、国が違っても日本と同じような問題を抱え、取り組んでいることが分かりました。ちなみにこの国の出生率は、1.5~1.7%とのことです。

◎Plunket Society (プランケット・ソサエティファミリーセンター)
 ニュージーランドの子ども、および家庭の健康を目的として創られた施設。(世界中で一番健康な子であるようにとの目的)1900年はじめ、病気で死亡する子どもが多発し、両親の育児教育が必要とキング医師が提案し、これに共鳴したプランケット総督婦人より創設された。運営は官民共同で、実際の仕事やケアは往路のケアワーカーとボランティアワーカーを組み合わせて行われています。ニュージーランド国内に19ヶ所のエリアオフィスと、21ケ所のファミリーセンターを設置しています。子どもの健康チェック、子育て相談、育児教育はもちろん、チヤイルドシートの貸し出しや母子手帳の配布も行っています。民家がそのまま使用されており、居間はプレイルーム、主寝室は会合室、子ども部屋はスタッフ室や収納室、キッチンは談話室、庭は遊び場として使用されています。ナースまたはヘルスワーカーが平日の昼間に常勤している施設です。このセンターは、自分達で運営し、毎年何千人もの方がボランティアとして手伝っています。子どもが生まれる前か
ら、何回も訪問サービスや電話相談を行い、沢山の支援を行っています。相談内容については、呼吸器の問題・寝る時のぐずり・幼児ストレス・母乳のあげ方などです。実際に、絵や写真を見せ、VTRを視聴しながらゆっくりかかわり、何を知りたいのか?何を学びたいのか?その中で子どもにとっていかに家庭が大切かを親達に知らせていく細やかな支援活動がとても素晴らしいと思いました。

◎Elims Christian Kindergarten (公立幼稚園)
 オークランド公立幼稚園協会所属の視察について、同協会より「子どもへの影響を考慮し、視察は、1つの幼稚園につき最大5名までにしてください。」との連絡があり、4~5名1組で3ケ所の幼稚園に分かれての視察となりました。ニュージーランドでは、園児保護の観念が大変厳しいため、視察に際して様々な制限および注意点を守らねばなりません。
①写真撮影は禁止。②子ども達との会話は子どもが話し始めるのを待つこと。(子どもに挨拶をした場合、子ども達が挨拶を返してくるのを待つこと)③子ども達に触れないこと。
 ここは、3歳から5歳の幼児教育を行う、日本でいう幼稚園です。その教師は教育学士を取得し、かつ登録されていなければなりません。また、幼稚園は基本的に政府が運営し、保育料は無料です。しかしながら、時間が短いため、就労している両親のニーズには対応できません。地域の幼稚園協会により管轄され、ほとんどが公立の施設です。

◎唯一の日本人公立幼稚園教諭ユキコ・ペンフィルド先生を交えた懇親会
 20年前ニュージーランドヘ来た時、日本の中学・高校の教師の免許しか持っていなかったユキコさんは、大学で幼児教育免許を取りました。公立幼稚園は、政府から要請を受け、午前に4時間の教育を行います。(午後の部は、3時間)保育料が無料なので、親からの寄付に頼っていますが、寄付は半数程しか集まりません。教師の賃金は国から支給されますが、子どもの教材などはこの寄付に頼るしかないため、必要な物がなかなか購入できない現状です。さらに砂場の改築もしたいが、これも寄付に頼るため思うように工事が進みません。現在、着工してから2年以上経っている状態ですとの悩みも聞きました。
・幼児教育は全て遊びの中から学ばせる。人の話を聞くことや、自分の思いを話すことを大切にしているが、遊びの中にどう教育を位置付けるかが難しい。
・できるだけ、一斉での保育は少なくし、一人一人の興味や関心を大切にした教育を行う。
・子どもには間違いを恐れさせない。子どもは、失敗しながら学ぶものである。
・子どもを叱る時、体罰は禁止。教師が叱る時は、決して子どもと1対1にならない。さらにその状態が周りから見えるようにしたり、もう一人の教師が付き添ったりする。そのため、密室になりやすい便所には、外からも見えるようにドアが付いていない。
・オムツを換えることは、男性教育者はできない。女の子と2人になってもいけない。必要以上に体に触れることも禁止されている。

◎研修を終えて
 この海外研修の中で耳にした、幾つかの忘れられない言葉が私の心に深く残りました。
①「将来素晴らしいニュージーランド人になるために、教育を受ける」この素直な教育の基本姿勢にとても共感できました。
②教師は子ども達にとって一番の教育素材です。子ども達が、将来素晴らしいニュージーランド国民になるための教えをする役目が教師にはあります。そのために、質の高い教育者を求めています。ニュージーランドでは、大学で3年間学んだ後に、勤めながら2年間の実地体験。実地体験の成績次第では、免許は先送りというシステム。実体験の場を通して資格を与える制度の導入は、今後必要になってくると思います。
③ニュージーランドでは、法律が時々変わります。それは、行政と現場とが共に歩んで改革を行うからです。「子どものことを思うなら、新しい法律を作ることは、少しも困難なことではありません。」母親が安心して子どもを生み、育てられる環境だけでなく、家庭での育児能力が低下している今、生まれて来た子ども達が、安心して生きていける環境の確立を図らねばなりません。
 ニュージーランドの良いところも悪いところも正直に見せてくれたこの海外研修。その中で、ニュージーランド全ての国民が、子どもを大切に思い、子どもを自分達で守ろうとする愛情の強さが伺え、心に津々と響いてきました。子育て支援のメニューは、親のニーズに応えて沢山ありますが、全て親サイドに立ってのものです。これからの支援は、親支援だけであってはならず、子どもサイドに立った子ども支援のメニューを確立せねばならない時代が来たのだと考えます。
 今まさに、全てを真摯な気持ちで受け止め、「将来の素晴らしい日本人を育てるために」我々教育者、そして家庭や地域、行政とが力を合わせ、お互いの考えを発信し合いながら、本当の意味の子育て支援に取り組まねばと思います。
 最後になりましたが、学ぶ機会を与えてくださったことに感謝致します。

(研修報告書より抜粋)

DSC00162_RDSC00167_RDSC00171_RDSC00173_RDSC00177_RDSC00202_RDSC00205_RDSC00214_RDSC00221_RDSC00227_RDSC00253_RP1010437_RP1010518_RP1010536_RP1010552_RP1010595_R

予定イベント
カレンダー
9月 2010
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930EC