フィンランド(2005/6/4-6/11)
ヘルシンキに到着すると気温は15度くらいで、日本の3月下旬から4月ごろの気候を思わせた。そこからバスで30分、「森と湖の町」、白樺林の白と牧草の緑のコントラストがとても美しいエスポー市の豊かな自然の中での研修が始まった。
◎エスポー市でのレクチャー
妊娠するとマタニティ休暇が10ヵ月とれ、それ以後ディケアセンター(ここでは幼保融合されたものでディケアセンターとよばれている)に預けることができる。自治体は預けたい人がいたらどこかに入所させる義務があり、保育法にも定められている。認識が始まる10ヶ月から6歳児まで(7歳児からは義務教育が始まる)の保育ができる。保育は2種類あって、集団で預かる「ディケアセンター」、もうひとつは最高5人までの「ファミリーディケア」システムである。どちらも自治体が経営をしている公立のものである。ディケアセンターには24時間体制や、障害を持つ子たちとの統合保育をしているセンターもある。保育士も3歳児以下は4人の子どもに保育士とヘルパーが、また3歳以上児は7人につき保育士とヘルパーが配置されている。保育負担額は所得に応じて0~200ユーロとされ、時間は平均5時間であるが、最高10時間までとされ、5時間以下であれば60%の徴収である。ディケアを利用せず家庭で育児をする人にも自治体のサービスを受ける資格があり、3歳までは育児助成金が受けられる。当市はフィンランドの国の中でも保育にかける費用が第1位で、人口も増加し、出生率も増えている。何らかの保育を利用している人は70%でそのうち3歳未満児は40%、3~5歳児は80%、6歳児は88%である。また、プレーグランドと呼ばれる親子で遊べる施設があり、8:00~17:00まで無料で利用できる。指導員も配置されている。
◎Kuutamoディケアセンター(24時間体制のセンター)
閑静な住宅地の中に、レンガ造りの建物でおよそ保育園とは思えないこじんまりとしたたたずまいであった。1980年の設立であるが2002年に24時間ディケアとなり、10ヵ月~6歳児まで90名が27名の職員により保育を受けている。この園では子どもの人権問題から幼児の写真撮影は禁止された。保育目標は子どもが自信を持って生活できるよう、自己確立をしていくこと、そのため一人一人に時間をかけ社会的適応性を育てていくそうで、リスニングには特に力を入れていると話を聞く。親との連携もしっかりなされており、入所時に懇談を開き子どもをどう育てるか話し合い、それを一人一人のファイルにとどめておくようだ。また、親としての役割がきちんと表になって渡されており、親はそれをしっかり頭に入れておくよう指導されるとのことであった。
親の役割とは①人生の先生であるべき、②人間関係の先生、③愛情を与える、④保護をする、⑤ストップをかける、日本の親にも十分当てはまることで、当たり前のことではあるが入所当初から子育てをする親の責任をきちんとわからせることの大切さを学んだ。
このセンターは夜間や週末の仕事をしている人が預けているので24時間を3交代して職員が勤務に当たっている。預けに来る時間は様々であるが、8時には朝食が出され、11時までは遊びの時間、11時には昼食、その後6歳児以外は昼寝、14時にはおやつ、17時から18時に迎えが来る。夜間保育児は17時に夕食、19時に夜食があり、シャワーを浴びて就寝となる。
親との連絡は連絡帳があり、子どもの様子がわかるようになっている。最高10時間の保育であるので朝5時ごろ迎えに来る人もあると言う。給食はセンター内で作られ、掃除も全て業者が行っていた。
◎Aallonhuippuディケアセンター (統合保育をしているセンター)
公園の中に平屋の木造の建物が建っているという感じで、入り口も狭く普通の家庭のようなディケアセンターであった。20年前に設立され3~6歳児までの保育を行っている。障害児は言語、知的な障害で、病院からの紹介で入所する。8時から17時までのディケアセンターである。どの保育室もソファーがおいてあり、家庭的な雰囲気を大切にしていた。
園目標は安全な環境でホジティブに、楽しく過ごし自己確立を目指すことである。教師は特殊教育の訓練を受けた者、幼稚園教諭の資格を持ったもの、ヘルパーがいる。3グループに分かれているが、全て年齢は混合で、社会不適応児や言語障害児など治療も含めて保育を行っている。また、言語セラピーは専門家が職員に指導に来たり、病院との連携も密接で、様子を見に来ることもあるようだ。また、親が問題を抱えている人もいるので、ソーシャルワーカーともつながりを持っているとのことであった。どんな親であっても子どもは大切なので、いろいろな機関とのつながりを持っているということであった。障害を持った子は子どもの能力に合わせて保育を行い、ビジュアル的な学習や眼で見ながらの学習なども大切にしている。特に音楽に力を入れ表現することを大切に行っている。親との連携も密にとり、通常2週間に1回懇談をして個人のサポートを行っている。そして何かひとつはいいことを伝えるようにしている。
自園だけでのケアでなく、市の様々な関係機関が連携を密にし、一人一人の子どもを育てていることがひしひし感じられた。子どもは宝、国の財産と言う考えが基となり大切に育てていることがよく理解できた。ここは子どもの写真も許可が出て、愛くるしい子ども達と一緒に記念撮影ができた。この時期でも外に行くときは防寒着、長靴の姿に驚かされた。
◎ディケアセンターを視察して
子どもがとても大切にされ、「子どもが宝、財産」と国や地方の自治体がしっかりサポートし、保育にかけられる予算も多いため、安心して子どもを生み、育てられる環境が整えられていることを羨ましく思った。特殊出生率も1.29と下がる一方の日本と違い、子どもの数が今増えつつあるというフィンランドとはとても対照的である。子どもを生みやすく、育てやすい環境にするために幼児教育の現場にいる私たちが少しでもできることは何かと考えた時、安心して子どもを生み、預けられる幼稚園、保育園でありたいと思う。しかし、預かる機能だけでなく、家庭での育児能力が低下してきている今、親としての役割を親自身がしっかり持つことへのサポートを行っていくことも機能に加えていかなくてはいけない。今回の視察研修でそういった親との連携、親指導の部分を学ぶことができたことは、大きな成果であった。また、様々な関係諸機関との連携を細やかに持つことが、育児不安を抱える親へのケア、指導にもつながり、しいては、子ども育てになっていくことも学んだ。体制が違う国の真似はできないが、活用できる部分を今後の職場に生かしていきたいと思う。
◎フィンランドの歴史を尋ねて
スオメンリンナ要塞はヘルシンキの港から船で20分ほどの島にある。かつてスウェーデン領だった頃にロシアからの攻撃に備え建築されたもので、今は住宅が建ち、市民の憩いの場所になっている。当時の花崗岩の城壁が所々に残り、緑の木々や草、青い海とのコントラストが最高であった。城壁の中で夏にはシアターも催されるそうだ。
ヌークシオ国立公園はヘルシンキから40分ほどの所にあり、恵まれた自然を背景にハイキングコースがある。2km、4km、8kmとハイキングコースが選択でき、私たちも通訳の佐藤さんと2kmのコースを散策した。3つの湖を眺めながら森の中へ。松林や、白樺林の中を汗ばむほどの速さで歩いた。フィンランドの人は歩くことが好きで日課にしている人も多く、通訳の佐藤さんもかなりのハイペースで案内をされた。40分ほどでコースを歩ききり、いい運動となり、森林浴をすることができた。
トゥルクの町はフィンランドで一番古い町で、中世の雰囲気が漂っていた。北欧ゴシック様式のステンドグラスが見事であったトゥルク大聖堂やシベリウス博物館、ルオスタリンマキ手工芸博物館など歴史を感じさせ、中性に迷い込んだかのような雰囲気を味わうことができた。
ヘルシンキでは路面電車(トラム)を利用して、徒歩で市内を巡った。ヘルシンキ大聖堂は1852年に完成したフィンランドの象徴ともいえる教会でみどりのドームと白い外壁のコントラストが美しく、その前には御影石が敷き詰められ、中央にロシア皇帝アレクサンダー2世の像が建っている元老院広場があり、朝早くから夜遅くまでたくさんの人々でにぎわっていた。
長い間スウェーデンやロシアに支配されていた歴史があり、どの町を訪ねても両国の名残がどこかしらに残されていた。また、郵便博物館は市の郵便局と併設されており、サンタクロースへの手紙を受け付けていた。サンタの村ラップランド地方へは行くことができなかったので、ここからクリスマスに幼稚園の子ども達にサンタクロースから手紙が届くよう依頼して来た。
エスポー、トゥルク、ヘルシンキとどの町も自然と共存し、自然に優しい街づくりが感じられる視察研修であった。白夜を経験し、時の流れが緩やかに思われる中での異国の文化、歴史、自然、また幼児教育の現場にじかに触れ、学ぶ機会を与えてくださったことに感謝致します。
(研修報告書より抜粋)











